才華龍学院 Ⅱ


だが、あまりにもスラスラと言うものだから全く追い付けない。

「えっ…ちょ……え?」

紅葉は頭が回らなくなってきているようだ。
それに気づいた陰は陽の袖をクイッと引っ張る。

「どうしたの?」
「……ん…」

陰は紅葉の方向を見たため、陽もそっちを見た。

そして、紅葉とカインが頭を回していたことに気がついた。

「あぁ、ごめん。つい夢中に話しちゃったね」

あはは と反省の色を見せて苦笑いをした。

「まぁ、明日出発して到着したらその子たちに会うからその時に聞いてみてよ!

今回は生徒として向かうわけだから、監視が薄いんだって

その時に教えてくれると思うよ!」

陰と陽は がんばって と言って去ってしまった。

「なにかと、忙しいんだな。」

さっさと話してさっさと帰ってしまった陰と陽…

小隊のメンバーと異名らしき単語だけが分かった。

「それはそうと、もう帰ったほうがいいんじゃないか?」

柳は外の景色を見て言った。
外は半分藍色、もう半分はオレンジ色の空が広がっていた。

「いつのまに!早く帰って支度しないと!」

アーミャはガタッと立ち上がり階段に向けて走っていった。

「おっおい!アーミャ!」

カインはアーミャが忘れていったカバンを持って お先! とアーミャを追いかけた。

「私たちも行きますか。」
「そうだな、俺たちも先にいくぞ」

紅葉と柳もゆっくりと歩いていく。

「……誰もいなくなったね。」
「うん。そうだね……」

2人になった燐と堺人は気まずいことこのうえない。

「そういえば、アーミャの慌てようが凄かった」

堺人がクスクスと笑っている隣で燐は

「いっつもああだよ。なぜかよくわからないけど」

まったく とため息をつく。
だが、その会話から段々と落ち着いてきた。

「明日は、いよいよ出発か…」
「緊張する?」

燐は空を見上げながら呟くと堺人が横から除きながら聞いてきた。

「緊張というか、正直表の世界はあまり知らないから」

燐たちが生きてきたのは裏の世界であるため、
賑やかな街で買い物したり、大会に出場することに実感があまり持てないのだ。

「表の世界かぁ……じゃあ裏の世界ってどんなのかな?」

堺人はふと思った疑問を呟いた。
それに、燐はビクッとなったがまたいつも通りの口調でいった。

「まあり知らないほうがいいかもしれないね。

相手の情報収集は命懸け、いつ殺されるかもわからないし。

何より私は暗殺者だ。そこに感情はあまりないから。」

燐は目線を下にした。
堺人は そっか と言ってまた沈黙が訪れる。

「……でも、学院に来てからはいろんな事が楽しくてしょうがないところはあるかな」

燐は少しだが表情が柔らかくなった。
それどころか笑顔に見える。

「そっか!それじゃあ、僕がたくさんの燐のいう表の世界を教えるよ!」

堺人は燐に向けて笑顔でそういった。

本心から知ってほしいのだ、悲しい事ばかりでなく楽しいことも。

グリムズも悲しい事ばかりではない。
20歳を過ぎると部隊を退役することが可能だ
それを利用して、お店を開いたり恋人を作ったりと自由で楽しい生活ができる。

だが、その年まで生きていられるかはまた別の話だ。

堺人は今知ってほしいのだ。
悲しみ、苦しみしか知らない燐に。

堺人の強い眼差しに燐は強くうなずいた。

それから、燐と堺人は寮に戻った。

2人ともほんとんどの荷物は準備してあったため、ゆったりと夕食作りを開始。

「堺人、そっちお願い」
「OK」

堺人も手伝っていくにつれて慣れてきたらしく、燐に頼まれることが多くなった。

夕食を食べ、お風呂を済ませた2人。
いつもの位置でコーヒーやココアを口に含む。

シーンとしていたがこれはいつもの事。
疲れを癒すようなものだ。

「明日は出発か……大会がんばろうな!」

堺人はそんなことをいって、部屋に入っていった。

「うん!」

燐も頷いて自分の部屋に入った。
今日はなんだか楽しく感じることがあったように思った燐であった。