それに対し、転校生は笑顔を崩すことなく、言葉を返した。



「いえ、大切なクラスメイトが亡くなられたんですよね?私はその人のことを知らないけど……悲しいってことはわかります。なので、気にしないでください。私の席は一番後ろの席でいいですか?」



空いている席を指さし、尋ねる。

そこは俺の隣。

元尾崎翔太の席だ。



「……先生、月影さんに座ってもらいましょう」



担任よりも先に口を開いたのは、学級委員。

それを聞いた担任は首を縦に振る。



「ああ、そうだな。月影の席は氷室の隣だ」



そう言われた転校生は俺の隣の席に座った。



「よろしくね、えっと、氷室くん?」



何も知らない転校生は、俺にだけに聞こえるようそう言ってきた。



だが、俺は転校生を一瞥すると、再び視線を窓の外に戻した。



「気にしなくていいよ、月影さん。アイツ、いつもこんな感じだから」



転校生の前の席にいる生徒が、フォローを入れる。



「うん……」



転校生はなにか言いたげにしていたが、気付かぬふりをした。