「お前がターゲットになったからだ。お前を殺したくないと思って会社を辞めた。だが、会社を辞めるということは、裏切り者になるということ。俺は、その会社の奴から逃げないと、殺されてしまうんだ」


「だから、さっきも狙われたのね。でも、私は?」


「俺が暗殺を辞めたとしても、お前がターゲットであることに変わりわない。だから、お前も狙われる。どうやら、今回は家族全員殺せという指示が出ていたらしいが……」


「なるほど……」


その場は沈黙に包まれた。



いきなり家族を失った彼女に、なんて声をかければいいのかわからず、ただ黙っておくことしかできなかった。



すると、急に彼女は立ち上がった。



「氷室くん、協力してほしいことがあるの」



そう言って、手を差し出してきた。



「俺にできることがあるなら」



俺も立って、彼女の手を握った。



でも、すぐに後悔した。



「その会社に復讐してやろう」



こんなことを持ち出されるなんて、一ミリも思っていなかったからだ。