架を拒絶してしまうのは申し訳ないし、かと言って女子たちの嫌がらせを甘んじて受けているのもしんどい。


彼氏でもいれば女子たちの誤解は解けるのかもしれない――


(黎が彼氏になってくれたらいいのに)
 

そうだと名案が思い付いて、その一秒後には絶望の朝に還ってしまう。


黎には逢わないと言われてしまったのだ。


そんな人にどうして彼氏なってほしいと言えるのだ。
 

どこにいるのかもわからない人なのに。
 

背中には引っ掻き傷一つない。


ただ、首筋に残った牙の痕しか、真紅にはない。


「真紅ちゃん、怪我した?」