「悪かったよ。もう触んねえから。あとは血を拭き取るだけだから」
「………」
青年は言ったが、失った信頼は――最初っから信頼なんかないが――取り戻すことなんてなく、怯えてしまった真紅は樹にしがみついてぷるぷるしている。
怯え切ったその様子に、青年を罪悪感がとらえていく……。
「………」
青年はどうしたものかとでも考えているのか、難しい顔をしている。
真紅は、今は自分の身を護るのに必死だ。
なんだか流れとしてはこの青年に助けられたみたいだけど、いなり『鬼だ』なんて名乗られて、対応に困っている。
「こっち来い」