「今――真紅が俺に抱(いだ)いているのが好意だったら、それは真紅の生存本能がそうさせているだけだ。俺はそれに乗じて真紅を――弄んでるだけかもな」
 

アパートを出てからずっと手や肩と、真紅に触れていた手が離れた。


「真紅が天命待って死ぬときに逢いに行く。それまで、ちゃんと生きろよ」


「れ――


「生きて恋して、生涯の伴侶を持って、子に恵まれて、俺が憧れるような生き方をしてくれ」


「え……黎、もう逢えないの……? さっき、一緒に生きるって……」


「最期のときには逢う。でも、真紅は俺みたいな奴とは近づかない方がいいんだよ。それが人間の生き方だ」