急に変わった話題にか、言葉にか、驚いたように振り仰いできた。
黎は瞳を細める。
「俺の血を容れたから、それが完全に《真紅》のものになるまでは真紅に俺は必要なんだ。
例えでも俺が死んだりしたら、一緒に俺の血も死ぬ。死なないために、俺がすることに、しようとすることに抵抗しない。例えば――」
真紅の肩を抱き寄せると、勢いのまま黎の肩口に額がぶつかった。
「いきなりこんなことされても、抵抗しようとか思わないだろ?」
「と言うか……今何が起きている? あれ? 黎どこにいんの? 目の前が真っ暗で……え? 私目ぇ瞑ってる?」
「……さらにお前は鈍くさいようだな」
「どういう意味だおい」
「勝気なとこは好みだ」
「………。私はどうすればいいの」
「嫌なことは嫌って言えばいい」
真紅の目の前が明るくなった。
急に入って来た視界の月明かりに目を細める。



