「黎のこと。私を助けてくれたとか、人間じゃないとか、わかったけど……全然知らない人を、すきになることって……あるのかな?」
 

見上げる真紅の瞳の色に、黎はどきりとした。
 

色がある瞳。放つ光彩が、虹のように綺麗だ。
 

そして、音にされた言葉。


「……さあな」
 

誤魔化すしか、なかった。真紅は真っ直ぐに問うてくれたのに。


「そこは答えてくれなくちゃ」


「真紅の気持ちは真紅にしかわからんだろ」


「……そりゃそうだ。それがね、今ぐるぐるまわってて、整理がつかない」


「………」
 

真紅は、自分を襲って殺しかけたものを、怖いとか、そういう風には思っていないのか?
 
死にかけたことは理解しているようだ。


でも、その犯人のことは、原因のことは、一度も口にしていない。


……防衛本能が、口にすることを拒否しているのだろうか。


「……な。真紅は今、俺に反抗出来ないだろ?」


「へ?」