好きになった人は吸血鬼でした。ーさくらの血契1ー【完】




「ん。ちゃんと厚着してきたな」
 

黎明の吸血鬼は階段の下で真紅を待っていた。


真紅は言われた通りにジャケットを着てマフラーを持ってきた。


十月の今、常用するにはまだ時期が早いが、真紅は帰りが遅くなったりするのでもう出してあった。


「これ」
 

白と茶色のチェック模様に、幾筋かのピンク色のマフラー渡され、黎明の吸血鬼は面食らっていた。


「男の人サイズの服はなくて……ないよりはマシかと」
 

言い訳をする真紅を見て、黎明の吸血鬼はまた軽く笑った。


可笑しそうに。


「ありがと。借りるよ」
 

受け取り、巻きつける。そのまま手を差し出して来た。