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「見―ちゃった」
「! ま、ママっ⁉」
母を起こさないようにと静かに部屋に入ったつもりだったが、母は起きていてにまにまと真紅を見て来た。
「あの人が桜城くんのお兄さん? イケメンじゃない。真紅ちゃんやるわね」
「へっ、ヘンなこと言わないでよっ。って言うか全部見てたの……?」
「だって真紅ちゃんがこんな時間に出て行っちゃうんだもの。黒ちゃんの式がいるからとか、たぶん黒ちゃんか白ちゃんのどっちかの所とは思ってたから止めなかったけど、心配で寝てられなんかしないわ」
「う……ごめんなさい……」
非は真紅にあるので、反論なんかできようはずもない。
小さくなって叱責を待っていると、しかし母は怒ったりはしなかった。



