「あ、あああの? 黎? お、怒ってる? よね? でも、その――」
「なんでお前はそう――……ただ護られていてくれない」
大事だから、安全な場所にいてほしいと思っては駄目なのだろうか。
真紅の言う通り、確かに真紅の問題でもある。
真紅は影小路の娘。始祖の転生。
真紅の将来も、小路流の将来も関わってくる問題だ。
「……私は、護られ過ぎてたんだよ」
まだ離したくない。
「ママにも、紅緒さんにも、黒藤さんにも。……私のことを知ってる影小路の人たちにも。月御門の人にさえ。……だからね」
そっと、真紅が黎の胸を押して距離を取った。
真っ直ぐに見上げてくる瞳(め)。
……そんな強い瞳をしてくれるな。



