「……黎?」 「―――」 その華奢な姿を見て足が縫い止められていた黎に、紅(あか)の名を持った少女が呼びかけた。 「っ……」 いきなり目元を潤ませた真紅に驚いた黎は慌てて駆け寄る。 「真紅? どうした。こんな時間に出歩いちゃ危ないって言っただろ?」 もう夜明けの時間も近い。なんでこんな時間に一人で―― 「………」 『………』 一人、じゃなかった。