好きになった人は吸血鬼でした。ーさくらの血契1ー【完】



「……黎?」


「―――」
 

その華奢な姿を見て足が縫い止められていた黎に、紅(あか)の名を持った少女が呼びかけた。


「っ……」
 

いきなり目元を潤ませた真紅に驚いた黎は慌てて駆け寄る。


「真紅? どうした。こんな時間に出歩いちゃ危ないって言っただろ?」
 

もう夜明けの時間も近い。なんでこんな時間に一人で――


「………」


『………』
 

一人、じゃなかった。