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結局、黎が桜城姓を離れることを最後まで反対し続けたのは架だけだった。
弥生が反対しなくなっても異議を唱え続けた辺り、架は本気で黎が跡取りに相応しいと考えているようだ。
だが、架と弥生を護るためにも、次期当主は架であるべきだ。
架の出生が知れることは、恐らくないだろう。
けれど、鬼人の血も、そろそろ絶えていいころだ。
このまま家に残れと粘る架を引きはがして、黎は一人病院へ向かっていた。
特に仕事が残っているわけではないが、なんとなく小埜の家に帰る気にはなれなかった。
雑務でもしていよう。
いつもは通らない道だ。桜城の家へ戻ったのも久しぶりのことだから。
――見つけてしまうのは、それが道理だからのように訪れた。



