母は父のことを、愛称で『マコ』と呼んでいる。 その呼び方を聞いてドキッとした。今の今まで失念していたが、真紅と同じだった。 真紅……。 (俺には、その子だけ) 「……恋い得る(こいうる)人がいます。その子の傍にいてやりたいんです」 自分と真紅は、多分出逢ってはいけない者同士だったのかもしれない。 でも出逢ってしまったし、触れてしまった。 逢いたいと、思ってしまった。 今も、逢いに行きたい。 「そのために桜城であることは邪魔である、と?」 「……はい」