好きになった人は吸血鬼でした。ーさくらの血契1ー【完】



「兄貴っ? だから俺はそういうのは――」


「架。黙っていなさい」
 

誠に制されて、架は立ち上がりかけていたのを退いた。
 

今度は美愛が腰を浮かせた。


「レイ……桜城の名を、マコとおそろいのものを捨ててしまうの?」
 

美愛は、正式に誠の妻ではない。


桜城内部には長男の母で当主妻として認められているが、対外的にはその位置は弥生のものだ。


『桜城美愛』という名も、戸籍上は名乗れない。


まだ、『ミーア・ウォルフシュタイン』が正式な名前なのだ。