「兄貴っ? だから俺はそういうのは――」 「架。黙っていなさい」 誠に制されて、架は立ち上がりかけていたのを退いた。 今度は美愛が腰を浮かせた。 「レイ……桜城の名を、マコとおそろいのものを捨ててしまうの?」 美愛は、正式に誠の妻ではない。 桜城内部には長男の母で当主妻として認められているが、対外的にはその位置は弥生のものだ。 『桜城美愛』という名も、戸籍上は名乗れない。 まだ、『ミーア・ウォルフシュタイン』が正式な名前なのだ。