好きになった人は吸血鬼でした。ーさくらの血契1ー【完】



「うん?」
 

言い差して、黎は言葉を区切った。どのように言うものだろうか……。


「ただ、離れたくなりました――」
「黎」
 

父は、硬い声で遮った。


「嘘偽りを許すように育てた覚えはないが?」
 

鋭い鬼人(きじん)の眼差しで言われ、黎は口を引き結んだ。


陰陽師の配下(はいか)に下ったとはいえ、人外をまとめあげている人だ。


その鋭さは牙のよう。
 

黎も、腹を括った。


「――架を、正式に跡継ぎとして披露目(ひろめ)てください」