「うん?」 言い差して、黎は言葉を区切った。どのように言うものだろうか……。 「ただ、離れたくなりました――」 「黎」 父は、硬い声で遮った。 「嘘偽りを許すように育てた覚えはないが?」 鋭い鬼人(きじん)の眼差しで言われ、黎は口を引き結んだ。 陰陽師の配下(はいか)に下ったとはいえ、人外をまとめあげている人だ。 その鋭さは牙のよう。 黎も、腹を括った。 「――架を、正式に跡継ぎとして披露目(ひろめ)てください」