好きになった人は吸血鬼でした。ーさくらの血契1ー【完】



黎は父によく似た東洋系の顔立ちで、純粋な西洋人である母に似ているのは瞳の色くらいだ。


架は、弥生の目鼻立ちのはっきりした面差しと――本人は知らないけど――実の父の柔らかい眼差しとを受け継いでいる。


兄が父当主にそっくりなのに弟は似ていない――という、本当のことを知らない親族の噂話が架の耳に入らないように、桜城に居た頃の黎は苦心していたりする。
 

誠は、架に視線を遣(や)ってきた。


「架、とりあえずみんなを起こして――」


「やめてください! 寝静まっている時間です!」
 

とんでもない主命をくだそうとした父当主に叫ぶ黎。


……黎は、自身が小埜家へ出ることを簡単に承諾したのは、偏(ひとえ)にこのテンションが高くノリの良すぎる三人から離れたかったのもある。