好きになった人は吸血鬼でした。ーさくらの血契1ー【完】



昨日の架の指摘、実は結構効いていた。
 

真紅に恋情を持つ前のところで踏みとどまろうとしていたのだ。


なのに架はあっさり、それを踏み越えていることを教えて来た。
 

理由はわからない。ただ、いつの間にか恋情があった。今は、愛情もあるかもしれない。
 

一目惚れ、とかそういうやつなのだろうか。
 

――調べたところ、退鬼師桜木は、特殊すぎる力のために滅んだ一族らしい。
 

その血で妖異を浄化する、他の退鬼師族にはない、異端の能力。
 

その血さえ生きていれば、退鬼師桜木の人間でなくても扱うことが出来る。


……空恐ろしい話だが、簡単に言ってしまえば、退鬼師桜木の術師は、捕えられ、血をしぼりとるために幽閉され、やがて数を減らしていったようだ。


陰陽師の大家(たいか)、影小路の庇護下(ひごか)に入った頃には、実戦闘に出たことがあるものはないほどに。