好きになった人は吸血鬼でした。ーさくらの血契1ー【完】



自分では、真紅を殺してしまうんじゃないかと不安になった。


――ほしいと思ってしまったから。血の一滴、髪の一筋ですら。


……だから、真紅にはもう、逢わないように。生きていてほしいから、離れた。
 

最期の時だけ、と心を封じて。
 

自分は他人を、大事に愛する方法を知らない。
 

父のように、母だけを恋人にして、けれど恋人を亡くした許嫁も護るなんて、黎には考えられもしない。
 

真紅しかいらないと、正直に心は話す。
 

父のように器用には、出来そうもない。


「……まさか架に教えられるとはな……」