「私、百合緋ちゃんと仲良くしてもいいのかな?」
真紅が――小路の娘ということもあって――黒藤の側であることは確定しているので、少し迷って問うと、無炎から応答があった。
『友人関係に他人の関係を入れる理由もないだろう。それに、黒藤は百合姫を嫌っているわけではない。
百合姫も、白桜を取られるみたいな感覚で個人的に黒藤に苛立っているだけで、仕事や家の話になれば無理なことは言わねえよ』
公私の区別はつけている。無炎に言われて、真紅が顎を引いた。
『真紅の母君のこともある。転学の件は、白桜も急いでいないし急かさないさ。ゆっくり考えてくれればいい』
最後まで顕現(けんげん)しなかった無炎に見送られて、真紅は母のアパートへ戻った。
……迷う必要と時間は、もうないのかもしれない。



