いきなり現れた青年は着物姿で、髪の色と少し背丈が違えど、その面立ちは黒藤とうり二つだった。
『真紅嬢よ。そちらは白のひ――若君の式のお一人じゃ。
面差しは黒の若君と同じじゃが、無炎殿は妖異、人ではない。
無炎殿は、真紅嬢があぱーとを出られてから、ずっと護衛しておってくれたのじゃ』
「……護衛?」
白桜の式で、妖異。真紅は全然気づかなかった。
無炎――という名の青年は、くすりと笑った。
黒藤と双児かと思うほど似ている顔だち。
髪はにごった紅で、黒藤より心持長めに見える。
着物に袴といういで立ちで、装飾品の類はない。



