好きになった人は吸血鬼でした。ーさくらの血契1ー【完】



いきなり現れた青年は着物姿で、髪の色と少し背丈が違えど、その面立ちは黒藤とうり二つだった。


『真紅嬢よ。そちらは白のひ――若君の式のお一人じゃ。

面差しは黒の若君と同じじゃが、無炎殿は妖異、人ではない。

無炎殿は、真紅嬢があぱーとを出られてから、ずっと護衛しておってくれたのじゃ』


「……護衛?」
 

白桜の式で、妖異。真紅は全然気づかなかった。
 

無炎――という名の青年は、くすりと笑った。
 

黒藤と双児かと思うほど似ている顔だち。


髪はにごった紅で、黒藤より心持長めに見える。


着物に袴といういで立ちで、装飾品の類はない。