好きになった人は吸血鬼でした。ーさくらの血契1ー【完】



「……百合姫は、変わりないか?」
 

白桜のもと――月御門で預かっている物忌(ものいみ)の少女。


黒藤はあからさまに話題を逸らした。


「百合姫は問題ない。……今のところ、だが」


「……俺が逢いに行っても百合姫には嫌われるだけで、あちらの気分転換にもならないだろう。……白にばかり百合姫のことは任せきりにしてすまない」


「じじ様が請(う)けた案件だ。大事ない」
 

百合緋の件は、白桜が先代の祖父から受け継いだ仕事だ。
 

百合緋は物忌(ものいみ)――百合緋の場合は、生まれついて憑き物があるということ――であるために、生家である水旧(みなもと)家より、旧縁の月御門家に預けられているのだ。