皮肉だ。
海雨を殺すはずだったものが、今、海雨を生かしている。
それを浄化しなければ、海雨の病状回復は望めない。
だが、海雨を生かしているものを取り払うということは――。
「白……」
「わかってる。何も『自分じゃないものに生かされている』ことは悪いことじゃない。
……俺だって、自分の中に太陰(たいいん)が居なければ、母様の腹の中で朽ちていた命だ」
白桜は、そっと胸のあたりを――心臓のあたりを握った。
白桜の中にいる異形(いぎょう)のもの。
それが、胎児の段階で死ぬはずだった白桜を助けた。
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