好きになった人は吸血鬼でした。ーさくらの血契1ー【完】



皮肉だ。


海雨を殺すはずだったものが、今、海雨を生かしている。


それを浄化しなければ、海雨の病状回復は望めない。


だが、海雨を生かしているものを取り払うということは――。


「白……」


「わかってる。何も『自分じゃないものに生かされている』ことは悪いことじゃない。

……俺だって、自分の中に太陰(たいいん)が居なければ、母様の腹の中で朽ちていた命だ」
 

白桜は、そっと胸のあたりを――心臓のあたりを握った。
 

白桜の中にいる異形(いぎょう)のもの。


それが、胎児の段階で死ぬはずだった白桜を助けた。