好きになった人は吸血鬼でした。ーさくらの血契1ー【完】



涙雨が傍にいてくれる――母には涙雨は、黒い小鳥にしか見えないそうだ――からか、嫌な気配を感じたりはしない。


ただ、現状では視えることだけが続行している。


部屋にはカーテンがかけられていて外は見えないし、真紅のすぐ傍には丸くなった涙雨がいるから、部屋の中には何もいない。


だが、明日に――もう今日か――の朝陽に窓を開ければ、今日視えていたものと同じものが視えるのだ。
 

真紅はそれを、当然だと感じている。
 

人間ではないモノが居ても違和感はないし、否定しようとも思わないのだ。
 

否定する理由がない。だってそれは居るのだから。


「なんてゆうか、今まで気づかなかったのが申し訳ない感じ」
 

そこに、確かに居たのに。真紅は気づかなかった。


真紅の意識が、認識していなかった。