涙雨が傍にいてくれる――母には涙雨は、黒い小鳥にしか見えないそうだ――からか、嫌な気配を感じたりはしない。
ただ、現状では視えることだけが続行している。
部屋にはカーテンがかけられていて外は見えないし、真紅のすぐ傍には丸くなった涙雨がいるから、部屋の中には何もいない。
だが、明日に――もう今日か――の朝陽に窓を開ければ、今日視えていたものと同じものが視えるのだ。
真紅はそれを、当然だと感じている。
人間ではないモノが居ても違和感はないし、否定しようとも思わないのだ。
否定する理由がない。だってそれは居るのだから。
「なんてゆうか、今まで気づかなかったのが申し訳ない感じ」
そこに、確かに居たのに。真紅は気づかなかった。
真紅の意識が、認識していなかった。



