「紅緒が色々話しに来たのよ。
紅緒も、結構家のことが嫌いだったから、よく影小路の邸(いえ)を抜け出して私のところに来てたの。
黒ちゃん連れて来たり、白ちゃんのお母様と一緒に来たり」
郷愁(きょうしゅう)するように、掛け布団の上で膝を抱える母。
真紅は思ったことを訊いてみた。
「白ちゃんのお母さんって、もしかして先代さんとかだったりするの?」
すると母は、淋しそうに顔をゆがめた。
「……白ちゃんのお母様は、白ちゃんを産んだすぐ後に亡くなられたの。出産が直接の原因ではないのだけど……。
それは当主を襲名する前のことだったから、御門の先代は白ちゃんのお祖父様になるの」
「お母さん……いないんだ……」
「ええ。だから余計に、紅緒は白ちゃんも大すきなの。
……絶対に秘密だけど、白ちゃんが本当は女の子だっていうのも、紅緒に聞いたのよ」



