「だって架くん、白ちゃんに睨まれても帰らなかったから。
白ちゃんと黒ちゃんは若年(じゃくねん)だけど、当代きっての実力者よ。
逆らってもいいことはないって、わかってると思って」
「………」
当代きっての実力者。月御門白桜と、影小路黒藤。
「……私がすきなのは、桜城くんのお兄さんだよ」
「お兄さんがいらっしゃるの? けど、桜城家の跡継ぎは架くんだって聞いたことあるけど……」
母は小首を傾げた。黎のことは知らないのか……。
「なんか、お母さんが違うんだって。その……そういった意味で色々あるみたい」
「そうなの……。お兄さんも淋しい思いをされていたのかしら……」
『一人になるように、自分で仕向けていたんだ――』



