母はたくさんのご飯を作って待ってくれていた。


同じ食卓について、出来たての料理を食べて、やっと心は落ち着いて来た。


「真紅ちゃんは桜城架くんのこと、すきなの?」
 

布団を敷いて寝る準備をしているときに、母が唐突に訊いて来た。


真紅は思いっきりむせてしまった。


「あらあら、大丈夫? 恥ずかしいの?」


「まっ、ママ……、桜城くんは友達。そんで、桜城の家の人だから私の傍にいてくれただけだよ。

……さっき桜城くんに挨拶してたんだから、おうちのことは知ってるんじゃないの?」


『君が桜城くんね――』
 

確かに母はそう言った。


恨みがましく睨むと、母は口元を手で隠してわざとらしく微笑んだ。