「今は、というだけで、恐らく過去には、海雨には妖異が憑いていただろう。

それが何らかの理由で海雨から離れたか、朽ちた。

そして、それはある程度力の強いものだったために、残滓――気配の残り香みたいなものが、まだ海雨にまとわりついている。

その所為で病は回復しないのだろう」


「それは……取り払う? みたいなことは出来るの? 海雨が、せめて退院出来るくらいには――」


「そうさな。やり方で言えば、浄化が一番いいだろう。

本体はもう海雨の中にも影にもいないから、残ってしまった気配だけを浄化すればいい。だが、問題点もある」


「問題?」