「いや、お前なんだけど」 とは、大声では言えなかったのでぼそっと言った。 「じゃあ、首に手ぇ当ててみ。牙痕(がこん)――この、牙の痕あんだろ」 と、口を開けて自分の牙を指して見せた。 人間にはないほど鋭利な。 真紅は目を見開き首に手を当てた。あった。左首筋の後ろに、穴が空いている。 「――きゅうけつき……?」 さっと、真紅の意識が記憶を取り戻していく。