好きになった人は吸血鬼でした。ーさくらの血契1ー【完】



「いや、お前なんだけど」
 

とは、大声では言えなかったのでぼそっと言った。


「じゃあ、首に手ぇ当ててみ。牙痕(がこん)――この、牙の痕あんだろ」
 

と、口を開けて自分の牙を指して見せた。


人間にはないほど鋭利な。


真紅は目を見開き首に手を当てた。あった。左首筋の後ろに、穴が空いている。


「――きゅうけつき……?」
 

さっと、真紅の意識が記憶を取り戻していく。