好きになった人は吸血鬼でした。ーさくらの血契1ー【完】



「黒藤さんに逢って、影小路や桜木の話を聞いてから、なりたい自分が二つあったの」


「……訊いても?」


「海雨と、ずっと親友(ともだち)でいること。……黎と、一緒にいる自分であること」


「………」


「どっちも、捨てられないの。だから……架くんって、呼んでもいいかな?」
 

名前を呼ぶ。陰陽師の資質を持つ自分が。それには意味がある。
 

架は微笑を浮かべて答えた。


「いいよ。なら俺にとって真紅ちゃんは『姫』になるね。――正統・影小路の姫君」
 

……ひめっ⁉ いきなりぶっ飛んだ話に、真紅は慌ててしまう。