「黒藤さんに逢って、影小路や桜木の話を聞いてから、なりたい自分が二つあったの」
「……訊いても?」
「海雨と、ずっと親友(ともだち)でいること。……黎と、一緒にいる自分であること」
「………」
「どっちも、捨てられないの。だから……架くんって、呼んでもいいかな?」
名前を呼ぶ。陰陽師の資質を持つ自分が。それには意味がある。
架は微笑を浮かべて答えた。
「いいよ。なら俺にとって真紅ちゃんは『姫』になるね。――正統・影小路の姫君」
……ひめっ⁉ いきなりぶっ飛んだ話に、真紅は慌ててしまう。
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