「……妖異が視え、涙雨の声も聞こえているということは、真紅の霊力は形になりつつある。
紅緒様の封じを破って出てこようとするのを、紅緒様の力で無理矢理押さえつけている状態のようだ。
こうなれば、紅緒様がかけた誕生日という約束の時間の前に、妖異も真紅に気づくだろう。
……今はまだ紅緒様の力で真紅に近づけないでいるだろうが……」
「………」
真紅は唇を引き結んだ。
白桜の結界の中では『妖異の類』というものは視えないし感じもしないが、今朝から決定的に、人間ではないモノが視えている。
声が聞こえているのは涙雨に限ってだが、真紅自身、もう自分の血は否定しようがない。
影小路の娘であることも、桜木の血を引いていることも。
(……ん?)



