好きになった人は吸血鬼でした。ーさくらの血契1ー【完】



「どうなるかは、まだはっきりとは言えない。黎明のはあまり例のない混血だ。

そのために桜城の家を出て陰陽師である小埜家で育ったほどだ。何か不穏なことになれば、すぐに対応出来るようにと。

もとよりこの国に吸血鬼ってのはいないんだ。吸血性のあるものでいうなら蛭(ひる)なんだが、あれはあくまで動物であり妖異となっても動物霊だ。

ヒトと変わらない吸血鬼とは違う」


「……ひる?」


「田んぼとかにいる虫だ。皮膚から血を吸うところは吸血鬼と一緒だが、幽霊となっても意思を持つようなことはない。

……吸血鬼と鬼人の混血に、果たしてこの国の退鬼師の血が通じるかどうかもわからない」