好きになった人は吸血鬼でした。ーさくらの血契1ー【完】



「こんなガキみたいな奴の血がうまいなんてなあ、自分」
 

やはり、自分の本質は鬼ではなく吸血鬼だったか。
 

青年になった少年は、勝手に引きずり出した布団に横たえた少女の頬を撫でた。
 

血族内で起きた事件に乗っかって家を飛び出た少年だった小埜黎。


体面上は動けなかった父だが、伝手から息子を匿ってくれる人物を頼った。


青年は現在彼らに監視されながら過ごしている。
 

――ということになっている。
 

監視という名目に匿われて、青年は今、人間として生きることが出来ている。
 

そんな厄介なだけの自分が。……よりによって人間の血を欲するようになるなんて。
 

最期まで傍に、なんて約束を、するりとかわしてしまうなんて。


「真紅……」
 

最期のとき傍にいる。


その言葉は、嘘じゃない。


「ん……」