「こんなガキみたいな奴の血がうまいなんてなあ、自分」
やはり、自分の本質は鬼ではなく吸血鬼だったか。
青年になった少年は、勝手に引きずり出した布団に横たえた少女の頬を撫でた。
血族内で起きた事件に乗っかって家を飛び出た少年だった小埜黎。
体面上は動けなかった父だが、伝手から息子を匿ってくれる人物を頼った。
青年は現在彼らに監視されながら過ごしている。
――ということになっている。
監視という名目に匿われて、青年は今、人間として生きることが出来ている。
そんな厄介なだけの自分が。……よりによって人間の血を欲するようになるなんて。
最期まで傍に、なんて約束を、するりとかわしてしまうなんて。
「真紅……」
最期のとき傍にいる。
その言葉は、嘘じゃない。
「ん……」



