「俺は……兄貴とは逢わせてもらったこと、少ないですから」
真紅は瞬く。
黎も、桜城の家にいたころはあまり接触がなかったと言っていた。
「では、目に見えて体調の異常はなさそうだったということでいいのか?」
「はい……。いつもと変わりない、としか見えませんでした。ですが、兄貴は――」
「鬼人だが、吸血鬼でもある。真紅の血は退鬼のもの。……真紅の血を得た黎明のの命が危うくならないか、それが真紅の心配か?」
核心を突かれて、真紅は唇を噛んで肯いた。
声に出して答えれば、涙があふれてしまいそうだった。
真紅の血は、鬼を殺す。
白桜は表情を崩さず答えた。



