「私の苗字だけど?」 アパルトマンの一室。 そう名の書かれた部屋の前で黎は足を停めた。真紅の部屋だった。 しかし本当にどんなにおいがしているのだろうか。 抽象的な言い方だったから、はっきりとはわからなかった。 「親いないって言ってたけど、ここで降ろすか?」 「警察を呼ぶべき事態になる?」 「ならねーよ」 言い、黎はドアを開けた。 「真紅、歩けるか?」 「歩く」 黎の腕から降りて、靴を脱ごうとしたときに 「……ぁれ」 ふらりとまたよろめいた。 「……座れ」