「だから服を脱げと言ってるだろうが!」


「この状況で誰が脱ぐか! 変態鬼!」


「この状況だから言ってんだろ! 血まみれで帰る気か、馬鹿!」
 

夜闇の林道に響く怒声。
 

片方に、月を切り取ったような美麗の青年。
 

片方に、顔を真っ赤に染める、紅い少女。
 

二人が叫び合う――この状況の理由。
 

少女の服は赤黒い血で染められ、背中に走っていた傷の痛み。


この青年――少女曰く『変態鬼』の手を借りなければ、眩暈で座っていることも出来ない状態。


目の前のムカつくくらい、本当に腹が立つほどの、こんな状況でさえなかったら見惚れていたような――美麗な鬼に助けられてしまった、今の真紅(まこ)は……ついさっきまで、死にかけていた。


いや、正しくは殺されかけていた。