不安になってきた。 と言うか、今更ながら現実感がわいてきた。 今まではふわふわ夢の中のような気持ちだったから、吸血鬼だのファンタジー話を流しながら聞いていたが、家まで当てられると……。 「んなわけあるか。お前とは今日が初対面だ」 「だよね。……じゃあ、ほんとににおうの?」 「うん。すっげーいいにおい」 「……それは血のにおい?」 「真紅のにおいだよ」 「……どんなにおい?」 ここまでにおいの話をされると気になってしまう。 一応、おなごだし。 黎が階段をあがっていく。 「月のにおい」