ドキッとした。正直、今の今まで記憶をいいように抑えていたことを言い当てられたみたいで。
自分は、殺されかけたという。
あの日、学校終わりに海雨のところへ行った。
昏くなる前にと、一人で帰った。
夕闇に歩きなれた道を歩いていて――次に瞬間には、指一本動かせなくて、声も出なくて、銀色の月を背負った吸血鬼に、血をあげると答えていた。
――記憶がない間。……何が、あった……?
「若君、無理に真紅ちゃんを連れて行くなんてことは……」
「しないよ。ただ、護衛に涙雨をつけてもいいか?」
ぽん、とまたさっきの小鳥が現れ、真紅の肩に止まった。
……少しの重さも感じない。ただ、触れている感覚だけがある。



