「あ、いなくなった?」
「んー、母上の封じも解けかけてるかもなー」
黒藤は独り言ちるように言った。
「あの? 今の、鳥じゃないの?」
「姿は鳥だけど、俺の式だ。式神とか使役とか言われるやつ。一般人には黒い小鳥に見えてるから、色まで判別ついてるんだったら、真紅はもう見鬼と言って過言ない」
「……けんき?」
「平たく言うと、生物以外が視える霊視のことかな。
母上の封じが解けるのは三日後の、真紅が生まれた瞬間だ。確か正午だったと聞いている。
真紅の存在を秘匿するために、母上は霊力ともども封じたから、本来なら今、涙雨の本当の姿が視えるはずはない。
それが解けかけている。あるいは、真紅のうちから力が突き破り始めている。……どっちにしろ、このまま真紅を置いておけなくなった」
すっと、黒藤の瞳が細められた。



