好きになった人は吸血鬼でした。ーさくらの血契1ー【完】



「……うちにとっての主家(しゅけ)っていうのかな。俺たちの桜城家は、影小路に仕えているんだ。若君――黒藤さんはそこの先代の御子息で後継者だから、俺にとってはそう呼ぶ対象なんだ」


「……なんだか現代風ではないね……」


「それなのに普通に話せとか言われて……。若君にため口なんて聞いたら俺は一族に吊るし上げられます」


「そんくらい助けてやるって。で、本題だ。真紅は三日後、十六歳の誕生日だよな?」


「そうですが……?」


「真紅ちゃんの誕生日が何かあるんですか?」


「うん。簡単に言うと、生まれた時刻を迎えたら、真紅は一気に陰陽師としての力を取り戻す公算が大きい」


「……へ?」


「わ、若君……? 何を仰っているのです……?」
 

真紅も架も、気の抜けた声を出してしまった。