好きになった人は吸血鬼でした。ーさくらの血契1ー【完】



青年――黒藤に指摘された呼び方も戻ってしまっている。


架は何をそんなに慌てているのだろうか。真紅は瞬く。


「関係なくはねえよ?」


「ですが、紅亜様は影小路より離れられた身。桜木とももう関わりは……」


「いや、真紅は生まれる前に俺の母上と関わっちまってるから、どうしようもねんだわ」
 

必死な架とは裏腹に、黒藤は軽い様子で答える。


「あ、あの……」


「うん?」


黒藤は人のいい笑みで応える。


「あの……さっきからさっぱり話が見えないのですが……?」


「うん。それは俺も覚悟してた。ちょうどいい。架も補足説明して」


「若君……」
 

架は疲れたように声を押し出す。