青年――黒藤に指摘された呼び方も戻ってしまっている。
架は何をそんなに慌てているのだろうか。真紅は瞬く。
「関係なくはねえよ?」
「ですが、紅亜様は影小路より離れられた身。桜木とももう関わりは……」
「いや、真紅は生まれる前に俺の母上と関わっちまってるから、どうしようもねんだわ」
必死な架とは裏腹に、黒藤は軽い様子で答える。
「あ、あの……」
「うん?」
黒藤は人のいい笑みで応える。
「あの……さっきからさっぱり話が見えないのですが……?」
「うん。それは俺も覚悟してた。ちょうどいい。架も補足説明して」
「若君……」
架は疲れたように声を押し出す。



