好きになった人は吸血鬼でした。ーさくらの血契1ー【完】



「『若君』なんて日常で使う言葉じゃないよね……」


「跡継ぎとか言ってるし……」


「由緒あるお家? とかなのかな……」
 

みんな、真紅を攻撃する毒気が総て抜かれてしまったようだ。
 

むしろ、同情的な眼差しすら受ける。


「あの……ごめんね? 言えない理由……だったんだね?」
 

話しかけて来た女子が、そう言った。


むしろ真紅は知らない理由だったが、そう解釈してくれるなら、それでいいだろう。


……二人の家のことは、真紅もほとんど知らないし。


「今まで、ごめんなさい。今日は……最初から謝るつもりで、みんな呼んだの」


「へ?」
 

最初から? 昨日より大人数なのは不思議に思っていたけど……。