好きになった人は吸血鬼でした。ーさくらの血契1ー【完】



困っていると、「桜木さん……」と控えめに呼ばれた。


振り返ると、いつも何かと絡んでくる女子の一人だった。


真紅同様に困った顔をしている。


「桜城くんのお兄さんと付き合ってたの?」
 

えーと……話を合わせねば。


「あ、うん。……桜城くんと兄弟ってのは、最初は知らなかったけど」
 

本当のところ、昨日までは、だけど。


「それで、桜城くんに協力してたの? だったらそう言ってくれればよかったのに」
 

まあ、今までの話が真実だったら、そう考えるだろう。
 

真紅は、ええと、と考える。


黎とは、架に話を合わせるという方向にしたのだ。


「それが……ご覧のとおり二人の家が複雑で、話していいかわからなくて……」


『ああ……』
 

女子のほとんどから肯きが返ってきた。