「なんで?」 「なんで、って……」 「私にそんなん持つわけないじゃん」 真紅が言い切ると、黎は疲れたように長く息を吐いた。 「彼氏役、頼める奴いなかったのか?」 「だって私、男友達とかいないし。それに……」 「それに?」 黎が彼氏になってくれたらいいなって思ったから、思いついたことだ。 ……とは、恥ずかし過ぎて言えない。 まっすぐに、ずっと見たかった瞳に見つめられて、真紅は慌てて黎から視線を逸らした。