「遊園地の案内やひろちゃん探しだけじゃなく、ナンパからも助けていただいて……本当にありがとうございました」


「どういたしまして」



唄子ちゃんが、礼儀正しくお辞儀をして、感謝を述べた。


可愛い子の手助けができて何よりだよ。



「いつか弘也に会えるといいね」


「会えますよ、絶対に」



笑顔で断言した唄子ちゃんの碧眼が、すっ、と細められる。



可愛い、よりも、どことなくかっこよくて。

キュンとした。


これがギャップ萌えってやつか!?




「それじゃあ、名残惜しいけど、バイバイ唄子ちゃん」


「さようなら、幸珀先輩」



優しく手を振って、手を振り返してくれた唄子ちゃんと別れた。



ぐう、とお腹が空く。

早く家に帰って、お昼ご飯食べたいな。






マイペースで無頓着な私とは裏腹に、唄子ちゃんは私の背中をじっと静かに眺めていた。


華奢な肩にかかる、美しい金糸に似た柔らかな髪を、なびかせるように払う。



「幸珀先輩、か……」



ソプラノの囁きは、心なしかひどく冷ややかだった。