ホッと安堵してから、私は唄子ちゃんの白い手を取った。



「今日はもう帰ろう、唄子ちゃん!」


「え!?」



強引に唄子ちゃんを連れて走り出す。


後ろで凛と桃太郎の制止の声がしたが、聞こえなかったフリをした。





「凛さん」


「ん?」


「俺、あいつを連れ戻したいっす」


「……そうか。俺もだ」




私と唄子ちゃんが去った後。

2人がそんな会話をしていたことを、私は露ほども知らない。







颯爽と遊園地を退場して、電車を利用して地元に戻ってきた。



「ごめんね、急に弘也探し終了させちゃって」


「いえ、大丈夫です。どれだけ探しても見当たらなかったですし」



結局、観覧車で弘也に出くわした件は、唄子ちゃんに報告しなかった。


罪悪感を抱きつつも、これ以上神雷と関わったらダメだと、自分の中の何かが警告音を鳴らしていた。