私は神雷をやめて、下っ端じゃなくなった。


要するに、今の私にとって、成瀬凛は副総長ではない。



「えっと、じゃあ……凛?」



試しに名前呼びをしてみたら、副総長……じゃなかった、凛は表情を小さくほころばせた。


どうやら、これで正解のようだ。



また、トクン、と胸が跳ねた。




「りーんさーん!!」


「あ、桃太郎」



すると、凛の忠犬の桃太郎が、観覧車のある方面からこちらに駆け寄ってきた。



うわっ、桃太郎だ!

また何か言われたら厄介だな。


ここは、逃げるが勝ちだ。




「唄子ちゃん、怪我ない?」


「は、はい」



凛に気を取られてすっかり放置してしまっていた唄子ちゃんは、手首以外、怪我した部分はない。