声のした方へ振り向くと、案の定、近くで唄子ちゃんがナンパされていた。
しかも、筋肉ムキムキ野郎に、だ。
肌黒いし、りんごを素手で握りつぶせちゃいそうなくらいガタイがよくて手がでかい。その上、顔つきが元々怖いのに、可憐な天使を相手に緊張しているのか目つき悪すぎ。
女好きでもイケメンな弘也に会いたがってる唄子ちゃんが、初対面で印象最悪なマッチョくんを選ばないのは当然だ。
待ってて、マイエンジェル!
今助けに行くよ!!
「とうっ」
「!?」
即座に駆け寄ったついでに、
唄子ちゃんの白くて細い腕を、痕がつくくらい強く掴んでいるマッチョくんの右手首に、手刀を入れてやった。
素早く動かしたから、威力はまあまあだと思う。
証拠に、マッチョくんの手が、唄子ちゃんの腕から放された。
「幸珀先輩!」
唄子ちゃんは、私の背後に隠れた。
マッチョくんは、ジンジン痙攣しているような痛みが廻っている右手を抑えながら、舌打ちをする。
間に割り込んできた私を、明らかに邪魔者扱いしている。



