でも、言えない。



言ってしまったら、ヒーローにも悪役にもなれずに、現状にあやふやなわだかまりを残してしまう。


そんなの、ダメだ。




私はヒーローにはなれない、ずるい人間。


だから、自分が悪くなるしかないんだ。



たとえ、それが間違いだったとしても。




「どうして、男装なんかして、俺達に嘘ついてたんだよ!」



桃太郎の必死な形相に、フッと薄ら笑みを漏らす。



「確かに嘘ついていたけどさ、簡単に騙される方が悪いよね?」


「なに、言って……っ」


「こうも鈍いんじゃ、いつか最強の座をどっかの族に奪われるちゃうよ?」



私は桃太郎を逆なでした後、また息をこぼした。



混乱も焦燥も困惑も、私への怒りに変えてしまえばいい。


そしたら、全て収まる。




ヒーローになれていたら、この場をどう収めていたんだろう。


……なんて、考えても意味ないか。

どうせ、私には思いつかない。



「本当は、もう少し皆を騙して遊ぶ予定だったけど、バレちゃったならもういいや」