数年前、ほんのわずかな期間だけ、この町に出現したNINA。



幼い子どもように小さな容姿だったと噂されていたNINAは、十蔵寺剛の言う通り、もはや都市伝説の存在と化していた。


しかし、今でも、繁華街にたむろしている不良の間では、こんな注意が密やかに根付いている。




『NINAには油断するな。あいつは化け物だ』





そんなNINAの名を利用して、不良撲滅隊は不良に恐怖を植え付けていたんじゃないの?


それじゃあ、不良撲滅隊にはNINAなんかいない、ってバレたらどうなるのかな。



「ねぇ、バラされたくなければ、あんたん家で遊ばせてよ」


「……っ」



十蔵寺剛、どうする?




数十秒間続いた、睨み合いの後。

十蔵寺剛は断念したように、重いため息を吐いた。




「仕方ねぇな」


「やった!十ぞ……フルネーム面倒だから、剛って呼ぶね。ありがと、剛!」


「すぐ帰れよな」


「わかってるって」